
長安に潜入するや、
気配を殺し、迅速に動く。
周りの者達は私に気付いていない。

慎重に駒を進め、ようやく噂の学者の下に辿り着いた。
早速話を聞く。

お前は本当にそんな名前で満足なのか。
いや、そんなことはどうでもいい。
例の物を見せてくれというと、その前にこちらの頼みを聞いて欲しいという。
・・・力づくで奪うのは造作もないこと。
だがそれは私の良心が許さない。
聞けば、荊州に向かわせた使用人達の作業の進行状況を聞いてきてくれとのことだった。
たやすいことだ。
だが、さすがにこの格好でうろつくのは危険が伴う。

ちょうど近くにいた兵士の頭をカステラの皮を剥くように締め上げる。
ゴキゴキと音が鳴り、兵士が気絶したところで着ている装備を頂く。
準備は整った。
いざ、荊州に向かう。
使用人は全部で4人。
すでに3人まで見つけ、状況を確認する。

なかなかに頼もしい事をいう。
使用人達は皆、誠実に働いているようだ。
しかし、最後の一人を発見した瞬間、言葉を失った。

目をカッと見開き、口が半開きのまま寝ているではないか。
なんという間抜け面だ。
このような不届きな輩にはそれ相応の仕置きが必要だろう。

ちょうど飼い慣らしていたトラの餌を探していたところだ。
ムシャムシャとトラに食べられながらも最後までコックリコックリ言っていた。
ちなみに食べ終えた後、ちょっと下痢気味になった。
当然だ。
そんなものを喰らうべきではないのだ。
トラも満足したところで急ぎ長安へ戻る。

学者は大変喜び、
「例の物あんたにあげるわ」
といい、懐から取り出した。

・・・なんだこれは。
ただの棒切れではないか。
「太公望の釣竿やで、ええやろ」
学者は嬉しそうに語りかけてくる。

その言葉を聞いた時、私の中で何かが弾けた。

奇声を発し、体中の気が迸り、力が溢れていくのが分かる。
それに呼応するかのように大気が震え、激しく大地が揺れ動く。
その様子に驚いた学者が声を掛けようとした、まさにその時。

抑えきれない全身全霊の気を込め、天に突き放った。
ドーン!!!
耳をつんざくような轟音とともに爆風が吹き荒れる。
猛烈に舞い上がる煙があたりを闇に包み込んだ。
数刻のち、煙が晴れ、我に返るとそこはもうただの更地に変貌していた。

少しやりすぎたか。
あのような小物に本気を出してしまうとは・・・
―まだまだ修行が足りぬな。
ほんのりと、はにかみながら本来の目的地である益州へと向かうのであった。
>たぶんまだ続く。
>閉