
なんとパンダが放牧されていたのだ。
噂では聞いてはいたが実際に見るのは初めての事だった。
興奮のあまり、握った拳を振りあげる。
その風圧で何頭かが吹き飛んでいってしまった。
まさに天災というべきか。
聞くところによると、蜀ではパンダは合戦で貴重な戦力として用いられ、
1匹で0.5人分の働きをするという役たたずなのである。
そのくせ食欲は人一倍な困り者なのだ。
しかしそのパンダでありながら、今の私の拳圧をなんなく耐え凌いだ者がいた。

その者の名は【吉田】といった。
パンダの中のパンダ。
役立たずの王である。
だが、吉田との出会いはこれが初めてではなかった。
私はその顔に見覚えがある。

そう、その昔に村でメスパンダをめぐり、猿と決闘を繰り広げていたあのパンダであった。
私の仲裁により事なきを得たが、
その時受けた傷を癒すため、故郷である成都に戻っていたという。

話を聞けば、あのメスパンダと付き合ったものの、1ヶ月程で逃げていったらしい。
音楽性の違いが主な原因であったと吉田はうそぶいた。
吉田の身の上話など正直どうでもよかったが、
次に吉田が話しだした時、その内容に衝撃を受けた。

蜀の本当の君主は自分だと言い出したのである。
なんでも、先ほど城にいたあのへたれは元々、一農民であったという。
それを吉田が目を付け、君主に仕立て上げたというのだ。
にわかには信じがたい話だったが、
私の拳圧をなんなく凌いだその実力を考えれば納得がいく。
あのような八の字眉毛よりも余程、君主の器に相応しいといえよう。
この国はパンダを頂点とした、動物王国であったのだ。

私はその真実に戦慄を覚えた。
この国を敵に回せば、私とて死を覚悟せねばならないだろう。
吉田に別れを告げ、手を振ってみたものの、
ちょっと目を離すともう他のパンダと見分けがつかなかった。
君主であろうがパンダであることに変わりはないのだ。
適当に目の前にいたパンダに一礼し、次へと足を向けた。
>次回に続く。
>閉