
村を旅立ち、しばらく歩くと一人の男に出くわした。
なにやら不審な素振りを見せ、こちらの様子を伺っているようだ。
だが、こんな小物に構っている暇はない。
と、その男とすれ違った刹那、

踵を返し、その回転に身を任せ渾身の力を込め、串刺しにした。
見ると腹の向こうの景色がチラリと見える。
どうやらあまりの突きの威力で風穴が開いたようだ。

油断大敵とはまさにこのこと。
いかに小物でも全力をつくすのが礼儀というものだ。
そんなやりとりを繰り返す事数日、目的の街についた。


花の都、長安。
長い、安いと書く。
何が?とか深く考えるべきではない。
うまいもんはうまい。
それ以上の言葉はいらない。
街に着くやいなや、早速露店を見て廻ることにした。
私は初めての街につくといつもそうしている。
食料・衣類の補充はもちろんのこと、
情報収集には様々な客と接している商人達から集めるのが一番なのだ。
しばらく街の中を進むと露店街を見つけることができた。

長く続く戦乱の今の世で商売にも影響がでているようだ。
もとよりこちらも庶民から値切るという無粋な真似は断じてしないつもりだ。
どれどれ、と陳列している商品をのぞく。

こんなゴミ屑をどうしろというのだ。
商人の娘の顔を見ると自信に満ちている。
私は持っていた槍をくるり、と回し一刀のもとにゴミ屑を叩き伏せた。
自然を粗末にするものではない。
娘は感激のあまり泣きくずれたようだ。
さらに隣の露店を見る。

なんでもという割には2種類くらいしか置いていなかった。
しかし、さらに意外な事実が浮き彫りになったのである。

凡人にならその手も通じただろう。
だが私にはそんな策は通じない。
善良な庶民が引っかからぬよう、【使用済み】という張り紙を貼っておいた。
露店で十分に品を買い込み、
情報収集もすんだところで長安の中を一通り見て廻ることにした。
中ほどまで進んだ住居群で、
一人の悲しそうな顔をした老人がぽつんと座っているのに気づく。

聞くとどうやら息子が自ら募兵に応じ、街を出て行ってしまったとのことだった。
身を案じるのも無理はない。
だが悲しみはそれだけではなかった。

なんとその息子が警護に当たっていた村が先日、賊に焼き討ちされ全滅してしまったというのだ。
その賊は罪もない女、中年、老人にまで手にかけたという。

その話を聞くやいなや、怒りのあまり全身の血が沸き立った。
握りしめる拳から血が滴り落ちる。
もののふの風上にもおけぬ。
そのような輩を生かしておくわけにはいかない。
いても立ってもいられず、その足でこの長安にいる皇帝に謁見するため、
街の中心にある城に急いだ。
>次回に続く。
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