
長安を旅立つこと3時間、ようやく蜀の首都『成都』に辿り着いた。
先日の術の影響か、体に少し違和感を感じるがなんら支障はない。

魏の許昌とは一風変わってのどかな風景が広がる。
緑は目に優しい。
それしか思い浮かばなかった。
しばらく街中を歩くと城が見えてきた。
そもそもの目的は各国の君主に謁見し、器を見極めることだ。
観光もそこそこに城に向かう。
城の中に入ると奥の方にいた、冴えない顔をした男が語りかけてきた。

この男こそが蜀の君主、【劉備】であった。
何か非常に残念だ。

この劉備、話していてもこちらと目を合わそうとしない。

何か悩み事でもあるのか?
宙を見つめ、ボソボソと何か言っているようだがまったく聞き取れない。
体も小刻みにプルプル震えている。

その態度に怒りがこみ上げ、拳を突き出し、威嚇する。
「ヒィ」
そう言うと今にも泣き出しそうになった。
その様子を見て相手をするのも面倒になった。
これ以上話すのは無駄のようだ。
他の武将達と対面することにする。

【関羽】、通称ひげ。
この者の強さは私の耳にも届いている。
中の下、通信簿でいえば3くらいであろう。
かなりの猛者である。

大陸では流行なのか、ここでもごりらが放し飼いになっていた。
あにじゃ、あにじゃと鳴き声を発している。

―【諸葛亮孔明】。
噂に名高い軍師である。
この者には私も一目置いている。
かつて、我が師よしのりとも相見えた事があったという。
きのこ相手に手こずる程の頭脳の持ち主なのである。
後ろで震えているへたれより、余程こちらの方が君主に相応しいだろう。

十分に堪能し、城を出ようとすると一人の老人が語りかけてきた。
老いぼれは唾を撒き散らし、熱弁を振るいだす。
しかし、それも束の間。
急にその熱弁が止まり、静まり返った。
その様子を不振に思い、老人の方を見て私は思わず息を飲んだ。

興奮しすぎて事切れたようだ。

まさに大往生。
見事な猛者であった。
その姿に感心し涙していると、
入り口付近に立っていたからか邪魔だったらしく、兵士達が老人を片付け始めた。
当然だ。
それはそれ、これはこれ。
物事には何事にもけじめが必要なのである。
大きく頷くと顔の唾を拭い去り、立ち去った。
>次回に続く。
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